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2026年4月7日火曜日

「死ぬまでイランから出られない」安易に『引っ越せば?』と言えない、残酷な現実の壁

孤立した国からの切実な声:あるイラン人YouTuberが語る「生々しい現実」

孤立した国からの切実な声:あるイラン人YouTuberが語る「生々しい現実」

現代のデジタル社会において、私たちは世界中の出来事をリアルタイムで知ることができると思い込んでいます。しかし、特定の地域において「真実」を発信することは、依然として命がけの行為であり、分厚い情報の壁に阻まれています。今回取り上げる動画は、イランの首都に住む26歳のクリエイターが、自国の過酷な現状と、そこから抜け出そうともがく自身の半生を赤裸々に語った非常に重要なドキュメンタリーです。

彼はまず、この特殊な動画を制作する勇気を与えてくれた存在として、大物ストリーマーであるAsmongold(アスモンゴールド)らの名前を挙げ、深い感謝の意を表しています。イラン国内で重大な事件が起きても、多くのインフルエンサーが沈黙を貫く中、Asmongoldだけは一貫してその話題を取り上げ続けました。

「アスモンゴールドがただ話題にしたからではなく、その『扱い方』が重要だったのです。彼にとってそれは単なるコンテンツではなく、現実の出来事として向き合ってくれました。インターネットが満足に繋がらず、プラットフォームがブロックされ、世界から孤立していると感じる場所に住んでいる人間にとって、彼のような影響力を持つ人物が『ああ、こんなことが起きているんだな』と存在を認めてくれることは、皆さんが想像する以上の救いになります。」

彼は動画の冒頭で、身の安全を守るために具体的な名前や詳細な行動については伏せざるを得ないことを明言しています。謎めいた演出のためではなく、事実をそのまま語ることが文字通り「危険」だからです。国際社会から孤立し、ニュースのヘッドラインでしか報じられない国の中で、若者たちは一体どのような現実を生きているのでしょうか。

19万8000%のインフレと絶望的な経済事情:家も車も買えない日常

動画の中盤で語られるイランの経済状況は、私たちの想像を遥かに超える壊滅的なものです。彼は言葉だけでは伝わらない現状を、具体的な「数字」を用いて解説しています。1980年代以降、イラン国内の物価上昇率(インフレ率)は驚異の19万8000%に達しており、自国通貨である「リアル(あるいはゼロを一つ省いたトマン)」の価値は事実上崩壊しています。

一般的な労働者の平均月収は約107ドル(現在のレートで約1万5000円〜1万6000円程度)。これに対し、首都郊外であっても住宅価格は1平方メートルあたり約5000万トマンに高騰しています。これはつまり、平均的な労働者が「小さなバスルームほどの広さ(約10.7平方フィート)」のスペースを買うためだけに、給料の全額を4ヶ月間貯め続けなければならないという異常な計算になります。

当然、ほとんどの国民はマイホームの購入を諦め、賃貸住宅に頼らざるを得ません。しかし、イランの賃貸システムもまた過酷です。

  • 異常な初期費用: 月々の家賃が約2000万トマンの小さなアパートを借りる場合、敷金としてその100倍から200倍にあたる「20億〜40億トマン」もの莫大な頭金を預ける必要がある。
  • 生活必需品の高騰: 卵のパックが約30万トマン、食用油が約350万トマンと、日々の食料調達すら困難を極めている。
  • 交通手段の欠如: 最高時速150kmも出ないような低スペックの国産車「プライド」でさえ約10億トマン(約100万円)。制裁の影響で2008年製の中古トヨタ・ハイラックスが約3万ドル(約450万円)という法外な価格で取引されている。

「家や交通手段といった基本的な目標が、一生叶わない夢に変わってしまった時、人々の思考は変化します。5年先の未来を計画することをやめ、ただ来月をどう生き延びるかだけを考えるようになるのです。」

孤立した環境でのクリエイター活動と「1000ドルの重み」

将来への希望が見えない中、彼が見出した唯一の光がYouTubeでした。しかし、ここでも「イランに住んでいる」という事実が巨大な障壁となります。イランでは国際的な経済制裁の影響で、PayPal、Visa、Mastercardといった国際的な決済システムが一切機能しません。YouTubeからの収益を直接受け取ることが不可能なのです。

そのため、彼は国内の収益化代行業者と契約を結びましたが、それは事実上の「搾取」でした。収益の20%をピンハネされるだけでなく、動画のアップロードからサムネイルの変更に至るまで全て事前に検閲・承認を受ける必要があり、ルールを破れば1000ドルの罰金、契約解除には5000〜1万ドルの違約金を要求されるという奴隷のような環境に3年間も縛り付けられました。

絶望してYouTubeを諦めかけていた彼を救ったのは、海外のYouTuber「Internet City」の動画編集の仕事でした。古いiPhone 7とVAIOのノートパソコンを使い、動画の書き出しに18時間もかかる劣悪な環境で作業を続けた彼のもとに、初めて1000ドルの報酬が振り込まれました。

「初めての報酬の1000ドルを見た時、息ができませんでした。ある人にとってははした金かもしれない1000ドルが、別の人にとっては人生を変えるほどの額になる。これは本当に狂っています。この仕事のおかげで自分のPCを買い、人生で初めて母親を海外旅行に連れて行くことができました。これでようやく自分の人生を築き、愛する女性と一緒にいられるかもしれないと思いました。」

遮断されるインターネット:外界との繋がりを保つための代償

しかし、ささやかな幸福と安定は、国家による強権的な「インターネット遮断」によって探突に奪い去られます。2022年には約10日間、その後の戦争の緊張下では約15日間にわたり、イラン国内のインターネット回線が完全に物理切断されました。この通信途絶により、彼は念願だった海外の編集の仕事を失ってしまいます。彼自身が「彼ら(雇用主)を責めることはできない」と語る通り、数週間も音信不通になる編集者と契約を続けることは不可能なためです。

さらに、イランにおける情報統制は年々苛烈さを増しています。彼はその恐ろしい歴史のタイムラインを共有しています。

  • 2009年: YouTube、Facebook、Twitterがアクセス遮断。
  • 2010〜2016年: TikTok、Snapchat、Viber、WordPressなどが順次遮断。
  • 2018年: 国内に4000万人以上のユーザーがいたTelegramがブロック。
  • 2022年: (政治的・社会的理由により)InstagramとWhatsAppが制限対象に。
  • 現在: Google Play等の一部を除き、世界のほぼすべてのプラットフォームがVPNなしではアクセス不可能。

また、制裁の影響によってイラン国内からの視聴は広告単価が極端に低く設定されており、ペルシャ語圏に向けて発信するクリエイターは収益の40〜50%を失っているという厳しい現実も語られました。彼はインターネット遮断中、家族や友人が互いの安否を確認できるようにするためだけに、将来のために貯めていた全財産を投じて20日間にわたり10台のサーバーを稼働させました。恋人と1日わずか15分通話するだけで、日給の大部分に相当する2ドル以上が消えていく。それが、イランで外部と接続し続けるための「代償」なのです。

その後、恋人が彼のために海外口座を開設してくれたおかげで、彼はついに自分名義の国際キャッシュカードを手にします。不可能だと思われていたことが現実になった瞬間、彼は「子供のように泣き崩れた」と振り返っています。

まとめ:「ただ引っ越せばいい」という言葉の残酷さと、当たり前の日常への感謝

動画の終盤、彼は現在の過酷な環境を生き抜いてきた一人の人間として、世界中の視聴者に向けて強烈なメッセージを投げかけます。私たちが普段「当たり前」だと思っている権利や娯楽が、彼の国では決して許されない行為だからです。

「あなたが今住んでいる場所に感謝してください。どれほど悪い環境に思えても、世界の別の場所で他人が何を経験しているか、あなたには想像もつかないでしょう。公共の場で恋人にキスをすること、砂浜で太陽の暖かさを感じること、心配することなく家でパーティーを開くこと、お気に入りの歌手のコンサートや街中で自由に踊ること。世界には、そうした人生の経験を一度も味わえずにいる人がたくさんいるのです。」

そして最後に、彼はイランの過酷な現状を知った外部の人間が、悪気なく口にしてしまう言葉に対して明確な釘を刺します。

「神に誓ってお願いします。もしイランから来た人が現状を話しているのを見かけたら、ただ『他の国に引っ越せばいい』なんて言わないでください。もしそれが可能なら、私たちはとっくの昔にそうしています。」

経済的にも物理的にも国境に閉じ込められ、愛する人との生活やささやかな夢すらも制限される日々。それでも彼は動画を作り、世界に向けて自らの声を届けようとしています。この動画は単なる一個人の苦労話ではなく、抑圧された社会の中で今この瞬間も生き抜こうとしている何百万という人々の「見えない現実」を浮き彫りにする、極めて貴重な証言だと言えるでしょう。

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